隣地境界のトラブルでそこまでやるか?
5年ほど前、ある尼崎市の古い一戸建ての持主から売却相談がありました。
老夫婦お二人でお住まいになられており、来月岐阜の次男の家に同居することが決まり、息子に金銭的な迷惑をかけたくないので売却処分して現金化したいとの事でした。早速、内見をし、相場に基づいて査定額を出させて頂き、売却準備が出来ました。
また、早期現金化をご希望でしたので当社買取の金額も提示させて頂き、もし一定期間で売れない場合当社で買取をさせて頂くということで合意し、早速売り出しを開始・・・しようとしたら、売主様がおもむろに「すいません河合さん。一つご相談があるのですが。。」
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私「何なりとお申し付け下さい。」
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売「実はお隣の人間と隣地境界にあるブロックの事で、揉めておりまして・・・今、裁判中なんです。」
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私「はあ・・・」
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売「私は父親から、この土地を譲り受けましたが、子供の頃からずっと隣のブロックは私どもの土地の上に建っていて自分たちのものだと聞いてます!ブロックの上にもワシの鉢植えもおいてます。確かに書類があるわけではありませんが、隣地の人間はうちのブロックだと不動産屋から聞いて購入したというので腹が立って腹が立って・・・それで訴えたんですよ!言ったもの勝ちは許せません!もし、隣の人が倍の値段で欲しいと言ってきても絶対に売らないでください!!」
すごい剣幕で熱弁されておりましたので、それは大変ですねぇと同調しながら続けてお話を伺うことに。
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私「なるほど。で、裁判は終わりそうなんですか?今のまま係争中ですと、物件は売却出来ないので裁判が結審してから売りましょうか?」
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売「いや。一審・二審は相手の主張が通りました。でも、絶対うちは正しいので今最高裁までいく準備中なんです!」
いやいや。。。おじいさんよ。。。暇つぶしか??
言ったもん勝ちはあんたの方やないかい!!
たかが、境界ごときで最高裁までいくやつどこにおるねん!!
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私「客観的な意見を言わせてもらいます。最高裁にいっても結果は同じだと思います。時間とお金がもったいないので取り下げてください。息子さんとこで同居するなら、売却すればもう関係ないじゃないですか?」
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売「でも、あのブロックはワシの土地じゃ!あんな隣人に買われる位なら売らん!!」
ふぅ。。
疲れますよ。。。
これは、言っても理解して頂けないと思いましたので言いませんでしたが、土地の境界線というのはプレートや杭の有無にかかわらず、ほとんどの場合きっちりと確定します。
それはそのポイントに対して、マンホールの中心から何ミリ、控え鋲から何ミリなど、測量士は確定ポイントを打つ時に様々な根拠を残して境界線を決定しておりますので、そうそうぶれる事はございません。
仮に、境界杭や境界プレートが紛失してもすぐに復元でき、いい加減なものではないので、ごまかしなど効かないのです。希に不動産業者が購入した土地の隣地の方が「このブロックはワシのものじゃ!!」と言ってくるケースがあるのですが、この場合、不動産業者はこちらが正しくても揉め事をしてプロジェクトの遂行が遅れるのを嫌い、理不尽な要求を呑むケースもあります。
ただ、これはあくまでイレギュラーケースで本気を出して時間をかければ正解は出るのです。なので民間VS民間の場合、きっちりと答えがありますのでごね得はございませんから。
結局、この売主は上告せず、当社が買取をさせて頂き、無事に息子さんの住む岐阜に引越しされました。
当社が買い取ってからも売主は
「購入してもらった土地は今後どうされるんですか?」とひつこく聞いてこられましたので、
「まだ、検討段階です。解体して建売住宅にするかもしれないですし、賃貸で収益を得るかもしれません」
と曖昧な返事をし、その場を収めました。
人間の執着と遺恨って本当に怖いですね。
ブロック位でそんな腹立ちます?
金と時間を無駄使いして、暇つぶしをしてるようにしか思えませんし、こんなものに絡まれた隣人は不運です。
この、案件はなぜか悲しい気持ちになりました。
P.S
勿論、買い取った土地は建物を解体して、速攻隣地の人に売却しましたが(笑)。非常に物わかりの良い方で、とても喜んで頂きました。この場合、誰が正義で誰が悪なんですかね?私が悪人・・・?いやいや。ジャッジは読者にお任せいたします。