分譲駐車場権利付きマンション
マイホーム、特に分譲マンションを検討されている方はご存知の方もいるかもしれませんが、物件を探していると「分譲車庫権利付きマンション」と謳われているものがございます。
これは新築当初に分譲業者が少しでも利益率を高めようと車庫の「専用使用権」や「区分所有権」を売却し、その後権利者や所有者は月々の賃料が発生せず、管理費と修繕積立金だけで車庫を利用できるというものです。権利を取得してしまえば、その後賃料が発生しないので、買主にとってメリットがあるように思えますが、これには様々な問題があり、最高裁までいった事例もございます。結果、法的には「分譲駐車場の取引は好ましいものではないが私法上の効力までは否定できない」というのが一般的な見解となっておりますが、私的には問題は山積みだと思っております。
そもそも、一戸建てと違い所有権と言っても「区分所有」ですので、土地自体に自分の所有の土地の線引きが出来ていません。そこに機械式駐車場を設置して所有権を認めるわけです。いわば駐車場を所有していない人の土地の持分が有る土地の上に所有権を持つという複雑な権利構造になるわけですね。また別の問題で、新築当初の分譲業者が専用使用権を売る際に「利益を享受できる権利があるのか」という事も争点になった事もあります。
特に僕が懸念しているのは「管理規約上のルール」と非常に権利の強い「所有権」との矛盾点です。
管理規約上は当然、敷地内の駐車場は区分所有者しか使用できません。通常はその運営で問題ないのですが分譲駐車場になるとイレギュラーパターンが出てきます。最近は銀行ローン一本で住宅ローンを組む人が増えていますので分譲駐車場の所有権にも共同担保として抵当権が付けられますので、所有者が売却する際には住居とセットで売却が行われます。現金でご購入されている方やすでにローンが無く抵当権が付いていないものであっても、分譲車庫が付いている方が高く売れるので、一緒に売却する点では問題はございません。
問題は強制的に住居と分譲車庫が切り離されて売買される場合です。
どのような場合かと言いますと、昔、住宅金融公庫でローンを組んで分譲駐車場権利付きマンションを購入し、それが競売にかかったケースです。しかも、同時に所有者が自己破産しないとき。
昔の住宅金融公庫は分譲駐車場にはノータッチで住居のみを担保とし、住宅ローンを融資しておりました。分譲駐車場が欲しい場合は別途、分譲業者と契約して現金で購入するしかなかったのです。いわば住宅金融公庫は分譲駐車場を不動産として扱わなかっため、共同担保をとることもありませんでした。このような物件が競売にかかり、所有者が自己破産しない場合、住居のみが競売にかかり落札されます。
すると、分譲駐車場については競売後も元の住戸の所有者に所有権が残ってしまいます。当然、元の所有者は引っ越ししておりますので、結果、区分所有者以外が分譲車庫を所有する形になるのです。これは管理規約上は大問題ですが、所有権に対抗することはできないのでどうすることもできません。悪意をもってすればこの駐車場を元の所有者が区分所有者誰かに賃貸して賃料を受け取ることも可能な訳です。
現在は、このような問題を管理会社及び管理組合の大半は黙認しているとは思いますが、今後、分譲マンションの建て替えブームが来た時には表だって問題になる事案です。
こうなると「重要事項説明書」もこの問題について説明する欄が少ないように感じますね。
業者の皆さんは一戸建ての重要事項説明書を作るより区分所有の重要事項説明書を作る方が簡単だと思われている方も多いかもしれませんが、こういった細かな部分の問題を書き切るのであれば、僕は区分所有の方が複雑だなあと感じます。そもそも、「区分所有」という売買に都合よく造られた概念に、定期借地や分譲車庫などをジョイントしたらどんどん権利関係が複雑になりほどけなくなって当然ですよね。。。
僕はこの分譲駐車場の問題はまだ十分な法整備が出来ていないと思っております。
特に登記について従来のものでは対応できないものであると思いますので、あまりお勧め致しませんねえ。。。